フランスから帰国してまず、この映画を観に行きたかった。
写真家のブルース・ウェーバー監督作品のモノクロームで貫かれた映像の美しさは秀逸だ。
そして、チェット・ベイカーは10代の頃彼を知ってからほとんどの録音を聴きまくり、そのフレーズをコピーした。最初の一小節を聴いただけでどの時代のどのアルバムかがわかるくらい、聴き込んでいた。
彼のアルバムがカフェで流れるジャズ、なんかになるかなり前のことだ。
チェットのことは音大在学中、トランペットを吹いていた先輩から教えてもらった。
大学の練習室でいつもジャズを吹きまくり、できたばかりのディズニーランドで働いたお金を貯めて、でニューヨークに行った。
在学中ただ1人、強烈に音楽的影響を受けた先輩だったがその後の消息は知らない。
映画ではチェットの音楽の素晴らしさと魅力、女性関係を取り上げる一方、嘘つきで無責任で過度な薬物依存症だった側面も取り上げている。
3回結婚している彼のことを、元妻たちは「クソ野郎」と呼び、どんなにダメだったかを話し続ける。
でも、チェットといる時の彼女たちのとろけるほどの良い表情はどうだろう。
良い夫が女を幸せにするとは限らない。
そして、完全な人間が人を魅了する音楽を奏でるというわけでもないのだ。
カンヌ国際映画祭でチェットがAllmost blueを歌うシーンがある。
不摂生と薬物乱用で50代後半とは思えない皺くちゃの顔だ。
でもその美しさといい知れない説得力に、映画が終わってからも席が立てなかった。涙が止まらなかった。
愚か者であれ。
クソ野郎上等。
その音楽が胸をこんなに打つならば、それでいいじゃないか。
今日は恵比寿ガーデンシネマに来ている。
近くには東京都写真美術館があり、大好きな場所だ。



ショップで森山大道氏の写真集で目の保養もした。

ここの映画館ではクリスマスまで「ゴッホ最期の手紙」を上映しているらしい。

映画館に行くと次々と良い映画の情報にぶち当たるのが楽しい。

私を魅了するアーティストたちは世間でいうところの「愚か者」なのだろう。そして自分も、もし別れた夫たちがインタビューを受けたら「クソ野郎」一斉攻撃をうけるのは必至、と苦笑いした。
自分の中にあるものが愛か狂気か。
それは誰にもわからない。
でもそれでいい。
また、映画館に来よう。
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