映画館で、映画を見る/ Ryuichi Sakamoto: Diaries 

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去年の今頃、ちょうど放射線治療を受けていた。

2月のベトナム公演に間に合うよう、乳がんの手術を終えて最短のスケジュールで治療が始まり、クリスマスもお正月も病院に通った。

乳がんの放射線治療については、照射量が少ないため副作用は少なめと言われている。

とはいえ、毎日一ヶ月も浴び続けるわけなので、私の場合は吐き気や食欲不振、めまいなど様々に症状があった。

初めてのことでもあり、恐怖や将来の身体への影響の不安も大きかった。

治療を乗り越え、一週間も経たずにアルバムのための録音を始めた。

いつ、何が起こるかわからない。

残しておきたい曲を全部、記録しておきたい。

疲れるとスタジオの床に、寝袋にくるまって休んだ。

音楽を残すこと

残す 音楽

残さない 音楽

霧散する 音楽

この映画は、音楽家・坂本龍一氏の最後の3年半の軌跡だ。

2014年からがんの転移と闘い、余命半年を宣告された。

そのひとつひとつの言葉に、自分が重なった。

音楽家にとって、生きることは音楽を創ることであり、音楽を創ることで生かされているのだと思う。

そしてそれは、環境問題や戦争などを考えることにもつながっている。

2011年の震災の頃から坂本氏が指導していた東北ユースオーケストラの演奏会。

紛争の地、廃墟の中で演奏されるヴァイオリン曲の、なんと美しいことか。

亡くなる1時間前、すでに意識を失っている彼の手は、確かにピアノを弾いていた。

最後のピアノソロコンサート作品”Opus”はDVDでも発売されているしYoutubeにも一部アップされている。

私はCDを購入した。

また、書籍「ぼくはあと何回満月を見るだろう」も読んでみようと思う。

幸いにも私は治療を終えた今年、ベトナム、フランス2回、北海道、九州など各地を飛び回ることができた。

随分無茶もしたけれど、ある意味、「やりたいことは全部、やっていこう」という決意のようなものが生まれたからでもある。

残された時間を意識した時から、新しい人生が始まったような気がする。

「幸せな人生だった」

最期にそう、言えますように。

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