VANLIFEとの出逢い

VANLIFEの本来の意味

「VANLIFE」とは、アメリカ出身で、元ラルフローレンのデザイナーであるフォスター・ハンティントン(Foster Huntington)が生み出した造語です。

彼は必要最低限のものだけをバンに詰め込み旅に出ました。

地位も名誉も、経済力もあったはずです。

しかし彼は、自由を選んだ。

自分にとっての本当の豊かさを求める時、何を選び、何を捨てるのか。

それが、「VANLIFE」だった。

最初は半ば自虐的にこの言葉を選んでいたらしいけれど、次第にそれが大きなムーブメントとなり、最終的にはVANLIFEをきっかけに、ツリーハウスを始めたくさんの興味深いプロジェクトに関わって成功していったのです。

好きなことを思い切り叫び、自分で道を切り開いていく。

それもVANLIFEに込められた想いだと思います。

日本では「車上生活者」などとネガティブなイメージで呼ばれたり、「車中泊」=キャンプの延長のような捉え方がまだまだ一般的なように思う。

私は、VANLIFEは生き方、哲学だと思っています。

南仏ツアーで見たこと、感じたこと

昨年の11月に続いて2回目の南仏ツアー。春に、地中海に程近い小さな街に1ヶ月滞在しました。

現地のミュージシャンたちとツアーとレコーディングの日々。音楽だけではなく、人と人とのつながりが確かに感じられる、素晴らしい経験でした。

抜けるように青い空。

どこまでも続く葡萄畑。

毎日、楽器を弾き、仕事をして、太陽と風を浴びながら歩きました。

ミュージシャン仲間やその家族といろんな話をし、それぞれのライフスタイルを自然体で認め合っているヨーロッパの個人主義に触れました。日本の同調圧力に息切れがしていた私は、生き返った想いでした。

コンサートの移動は全て、車。

彼らは車に演奏に必要な機材全てを積み込んで、何もない環境から自分達にベストな音響、照明を作り上げます。決して妥協はしない。そしてコンサートが終わると、みんなで協力して機材を全て撤収します。そして、車を運転して帰る。そん繰り返しはとてもハードな作業だけれど、とてつもない充実感がありました。

そして、移動中の車中ではいつもドラマの連続で、野生の牛が急に山から出てきたり、疲れて眠りそうになると大声で叫んだり、道を間違えたり、乱暴な運転に気持ち悪くなったり。時には真剣な話をしたり。

「来年は北ヨーロッパへ10時間くらいロードトリップするわよ。覚悟しといて!」

自分でハンドルを握り、ルートを決め、アクセルを踏んで路上を走る。

なんて自由なんだろう!

マネージャーの言葉にドキドキしました。

 私も車を運転したい!!!

HOME IS WHERE YOU PARK IT

帰国後、心は南仏から戻れずに時差に苦しんでいました。日本の閉塞感にもまた、息苦しさを覚えて参っていました。

そんな時、友達からメールが届きました。

彼女とは、お互いの深い感情のやり取りが自然にできていました。そして、「身寄りがない」と打ち明けた私に、こんな言葉をくれました。

「あなたはあのキャンピングカーに書いてあった言葉を覚えてる?HOME IS WHERE YOU PART IT、そう、あなたが訪れた場所は全部あなたの家なの。私の家もそう。だからあなたは独りじゃない。それを覚えていて。」

そのキャンピングカーは彼女の友達の車で、ドイツからポーランドを巡って南仏へ、4ヶ月の旅をしているカップルでした。彼らの笑顔は忘れられない。そして、初対面の私に、キャンピングカーの内部を見せてくれたのでした。

この時私は、この言葉がフォスター・ハンティントンの言ったことだと理解していませんでした。でも、、、なんて素敵な言葉なんだろうと、ただただ、涙が溢れました。

ノマドランド

南仏でマネージャーと車で移動していると、キャンピングカーをよく見かけました。

この映画はアメリカで社会問題になっている中高齢者の失業と車上生活に焦点を当てたもので、内容としてはネガティブな意味合いも強い。でも、その逆境を通して、主人公が自由を選択し、自分を取り戻していく過程が感動的で、大好きな映画です。

ノマドランド。

ふとした拍子にマネージャーもこの映画が大好きで、こういう生活が夢なの。と話してくれた。

ヨーロッパではアーティストが家族全員で車上生活を送り、移動しながら仕事をしている人たちが結構いるという。そういうキャンピングカーが広大な空き地で何十台も止まっているのを時々見かけた。「フェスがあるのよ、VANLIFEアーティストの。そこで演奏してみる?」なんていう話も出ました。

どんな生活形態でも、人それぞれの事情や背景があります。日本では、「みんな同じであること」がとても大切で、多様性なんて言ってるけれどアウトサイダーは全然認められない。南仏ではそれぞれが自分が選んだスタイルに自信を持って楽しんで暮らしていた。それがとても腑に落ちたのでした。

自分で選んだ道を、自分でハンドルを握って走りたい。

この日から、「VANLIFE」が頭から離れなくなったのです。

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