人にはそれぞれ、いろんなタイプがある。私は「動く」ひと。バンドネオンと一緒に、どこへでも。そして音楽を届ける役目。
そしてそれを「待つ」ひと。
小さな森の和美術館の大島和子さんは「私は飛べない鳥。ここでみんなが来るのを待つしかないの」と言う。

でも。
待っていてくれるひとがいるから、私は「伝える」ことができる。
そして、そこにはたくさんの、想いを共有する人たちが集まってくる。
今回の素晴らしいツアーで感じたのは、「美術館は大きな大きな作品」だということ。その作品を作っているのは、オードリー(大島さん)なのだ。そこへ飛んでくる、私のような鳥たちは、その作品のパーツとなる。それぞれの色彩をまとめて散りばめていくのが、オードリーであって、この美術館という一つの作品を作り上げているのは、「待つ」ひと、なのだ。
そして、「見守る」ひと。
画家・長田良夫さんとは、コロナ禍にオードリーに紹介していただき、その作品に音楽をつけた。
この動画を長田さんはすごく気に入ってくれて、お手紙のやり取りの中で親交を深めていった。その内容はアートや音楽の本質を突くもので、音楽活動のできない辛い時期の支えとなった。


コロナ禍明けにはコラボ企画もあった中、長田さんは突然の交通事故でこの世を去られた。
でも。
進化を続ける小さな森の和美術館には、長田さんの作品が至る所に展示されている。



室内の展示だけでなく、自然の中にも設置され、経年変化を楽しむこともできるし、日常使いのお盆に何気なく描かれていたり。本物は飾っておく物ではなく、常に使う物、目につくところにあるべきだという考え方は日本古来の民藝にも通ずる考え方で、私も賛成だ。


先日は奥様の良枝さんの入居されるグループホームにも招いていただいた。

「小川さんをもっと、支援してあげたい」
そう言い残して逝ってしまった長田さん。
オードリーとの長年にわたる魂のお付き合い。
きっとこの美術館を、私たちを、見守ってくれていると思う。
2月のベトナムツアーでは、美術館の協力で提供された長田さんの作品がオークションにかけられた。その売上は、ストリートチルドレンや失業者を支援するNGOへの資金となった。


待つひと、動くひと、そして見守るひと。
やっぱりここは、私たちの聖地だ。
