音楽を聴いて、涙を流したことはありますか?

長距離プロジェクト・2025年フランスツアー

今朝、パリから動画が届いた。

私のYoutube動画にコメントをくれたことから交流が始まり、この4月のフランス滞在中に初めて会ったDidieからだった。彼はコンサルティーナとバンドティンというオリジナルな配列のバンドネオンと似た楽器を演奏している。

研究熱心な彼は、世界中のバンドネオン奏者の演奏を聴いていた。人間業とは思えないような超人的なテクニックを持つ奏者もいるし、上手い人は星の数ほどいる。動画を見ているうちに、たまたま私のチャンネルを見つけたらしい。

「キミヨサンハ、ジブンノセカイヲモッテイマシタ」

“Volver”の譜面が欲しいということで、プレゼント。と言っても私の譜面は全てが書いてあるわけじゃない。頭の中にあることは書かないし、即興で弾くこともあるから。

どうやって譜面に書かないことを弾くのか、そして、私のバンドネオンの音と自分のバンドティンの音を比べてみたいということで、ご自宅にお邪魔した。長い時間をかけてチェックし、音楽の話をたくさんした。Didieはとても耳がよく、即興はしないと言いつつも、2人で音を出すといつまでも一緒にアドリブで弾くことができた。

コンサルティーナに持ち替え、「イマ、コノキョクヲ、レンシュウシテイマス」と弾き始めたのが、セルジュ・ゲンズブールの”La Javanaise”だった。

実はこの曲には素晴らしい思い出があった。2023年、南仏を拠点とし、世界を旅する”Mezcal Jazz Unit”との日本ツアー中、福島で立ち寄った「小さな森の和美術館」で日本の伝統的な食事を館長の大島さんが振る舞ってくれた。そのお礼としてなんと、彼らがアカペラでこの曲を歌ってくれたのだ。

私個人が6人のフランス人を日本に招聘した、大仕事だった。

Music Caravan Project 2023 | 小川紀美代
Music Caravan Project〜 旅する音楽祭 公式HP。2023年11月。バンドネオン奏者・小川紀美代とのフランス公演を経て、 Mezcal jazz Unit待望の初来日。 Florez Duoをゲストに迎えての、奇跡の日本ツアー。

素晴らしい経験だったけれど、演奏者である身で企画からビザの申請、経理、各会場との交渉など、渦中の時は本当に大変だった。そんな中、感謝の気持ちをこんな形で表現する彼らに心底感激し、大好きになった。それ以来、何か大変なことが起きるとこの動画を見て元気づけられていた。

その話をDidieにしてから約1ヶ月。

「アナタノタメニ、コノウタヲヒキマシタ」

Didieの演奏は、シンプルで飾り気がないのに深く、包まれるように優しい音がする。私は彼の演奏が大好きだ。

乳がんの手術や放射線治療を受け、渡仏6日前にコロナに感染してボロボロになってフランスに到着したこと。南仏で待ってくれていたMezcal Jazz Unitのみんな。パリでネットで知り合ったミュージシャンと会うことをすごく心配してくれたっけ。Didieと過ごしたパリでの日々。初めて会ったのに家族の一員のように接してくれたご自宅での時間。1ヶ月のフランスツアー。帰国してからのあれやこれや。実際、本当にいろんなことがあった。その全てが一気に思い出されて、涙が止まらなくなった。

音楽を聴いて、こんなに泣いたのはどれほどぶりだろう。

偶然にも明日はMezcalが歌ってくれた美術館の10周年記念イベントのために郡山へ行く。

なんだか全てが、あらかじめ用意されたことのようだ。

昔、芸大の留学生だったDidieがうちの近所に住んでいたと知った時も、相当びっくりしたけれど、きっとこの世界は繋がるべき人とは繋がるようになっているのだろう。

Didieは今年の秋、日本に来るらしい。とても楽しみだ。

Mazcal Jazz Unitともアジアツアーを画策中。2027年、再来年の春を目指して。まずは今年11月、フランスでのレコーディングツアーに向かいたいと思う。

思いっきり泣いた後は、前に進むのみ!!!笑顔でね!!!

明日は車中でゲンズブール聴きながら福島まで行こう。

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