みほちゃんがバンドネオンを習いにきてくれたのはもう、15年くらい前になるのかな。
とてもキュートで繊細で、でも何か芯の強さを感じる女の子。
あの頃は音楽以外のいろんなこともわいわい言いながら生徒たちと共有していて、みほちゃんとは音楽のこと、環境問題のことなど、とにかくマニアックな話でやたら気の合う子だった。
頑張ってバンドネオンを練習していたけれど、しばらくすると、群馬県の上野村へ移住すると聞いた。
みほちゃんらしいな、と思ったら、ちょうど自転車で南米一周旅行から帰ってきた、村に一つだけある萬屋の息子さん、つねくんと結婚した。
それから不定期に、何度か上野村に行って、みほちゃんとつねくんが営むyotacco cafeで演奏させていただいたり。
そのうち、かわいい3人のyotacco(群馬でやんちゃな子、という意味)が生まれ、その子たちの成長と共に、つねくんとの農業活動、そしていろんなイベントや販売活動を重ねていった。
yotacco cafeでは、海外からの農業研修の受け入れをして宿泊と物々交換をしていたり、つねくんの自転車仲間が世界中から立ち寄る場所だったらしい。
おっきな古民家を手に入れて、自分たちで修復してたっけ。
お父さんは日本の電子音楽の草分け、知る人ぞ知る、上原和夫氏。

和夫さんも一緒に壁塗りとかされたらしい。
バンドネオンが好きな和夫さんが、みほちゃんにタンゴやピアソラのレコードを聞かせていて、まんまとバンドネオンが好きになっちゃったんです。と笑いながら話してくれた。
東京にいた頃とは比べ物にならないほど健康で、ふっくらとしていたみほちゃん。
再会したときには、乳がんを患っていた。
車椅子で発表会にもきてくれた。
その後すごく元気になって、千葉のご実家からバンドネオンを担いでうちまでレッスンに通ってくれた。
「がんになったおかげで、バンドネオンに復帰できてラッキーです」


大変な時も辛いとは一言も言わずに、静かに微笑んでいたみほちゃん。
2023年にはフランスのバンドとの日本ツアー、群馬公演を上野村で開催したいと申し出てくれた。

その頃、がんの状態はとても厳しかったと思う。
でも、このコンサートはみほちゃんの生きる力になった。
みほちゃんが最後の力を振り絞って創り上げたコンサートは感動的だった。
ステージから、涙でくしゃくしゃになったいるみほちゃんをみた時、涙が止まらなかった。


その後もご実家に伺い、一緒にバンドネオンを弾いた。
バンドネオンが重くて弾けなくなった時は、ピアノを弾いてくれた。
彼女の魂が最後に求めたものは、「音楽」だったのだろう。
昨年6月。
みほちゃんは天国へ旅立った。
悲しい。というよりも、よく頑張ったね。天国でゆっくり休むんだよ。そんな気持ち。
そして、みほちゃんのお墓参りに上野村に行った直後。
蚊に刺されたな、と何の気無しに触っていたら胸にしこりを発見、私も、がんを告知された。
早期発見で手術、放射線治療と進み、今も検診は続けているけれど無事演奏にも復帰している。
みほちゃんがお知らせしてくれたに違いない。
そして3月30日、今週の日曜日。
みほちゃんのパートナー、つねくんが上野村で「よたっこのよた市2」を開催する。


みほちゃんとつねくんで紡いできたyotaccoの活動にリンクしたみんなが全員集合してのマルシェ。
そんな仲間に入れてもらって、とっても嬉しい。
この日は15:30から演奏をします。
美味しくて、楽しくて、ワクワクする出店がいっぱいです。
ぜひぜひ上野村へ!
人生で繋がっていく人たちって、あらかじめ決められているような気がすることがある。
魂の家族、のような。
人も、場所も、見えない力で繋がっているところに引き寄せられて、自然と集まった人や場所にはすごいパワーがあるって思う。
日曜日。
寒いみたいだね。
それもきっと、意味がある。
楽しみだ!!!
